5/04/2009

第5話 認知能力の役割

Role of Ability in Learning From Animations and Narrations

2つめの重要な学習者の特徴は,学習のときに使う認知的な能力です。
例えば,言葉と視覚イメージからの学習は,言語能力と空間認知能力に左右されます。したがって,私たちの研究は,空間認知を測るテストにおいて,高いスコアの学習者と低いスコアの学習者の学習結果を比較して進めます。

空間認知に関しては,さまざまな研究者によって,7つの方法で定義されています。
しかしながら,私たちは,空間認知能力の spetial visualization 空間的視覚化 に絞って考えたいと思います。

spatial visualization 空間的視覚化 とは,
頭の中で,2次元,または3次元で,物をまわしたり,折り曲げたりでき能力,
回したり,折り曲げたりした形態や形状の変化を想像する能力
のことです。

Sternbergは1990年に,空間的視覚化は,形を視覚化し,物の回転,そして,どのように,パズルのピースを合わせるかといった能力を含むとしています。

またh,Thurstoneは1941年に,空間的視覚化は7つの主要な認知能力のひとつだとしています。

さて,この空間認知力の程度が,contiguity effect 近接効果にどのように影響するのでしょうか。

今回の研究において,私たちは,意味のある学習(提示教材が新しい状況において,問題解決の場面で活用できるようになるための学習)に必要とされる,参照結合(視覚情報の表象と,言語情報の表象の統合)を構築する状況の下での,理解を模索します。

特に,私たちの目標は,「空間的な情報の処理スキルのマルチメディア学習における役割」
を特定することです。

私たちは,空間的認知力が学習に影響を与えるであろう2つの方法で,調べました。

まず一つ目は,以前の学習経験の推測のように,空間認知力も,学習を補うのではないかと考えました。
つまり,言語と視覚イメージを同時に提示しない場合,空間認知力の高い学習者は,ワーキングメモリー内の視覚イメージ情報の不足においても,イメージ情報を保持し,言語情報の表象と統合を構築できるのではと考えました。

ability-as-compensator hypothesis 不足を補う能力の仮説です。

したがって,この仮説に従えば,

「空間認知力の高い学習者は,言語と視覚イメージを同時に提示した場合も,続けて提示した場合も参照結合を構築できる。そして,空間認知力の低い学習者においては,言語と視覚イメージを同時に提示した場合にのみ,参照結合が構築される。」

(* 参照結合:言語情報の表象と視覚イメージ情報の表象の統合)

となります。

つまり,

もし,空間認知力が言語と視覚イメージの非同時提示による不足を補うとするならば,
近接効果 は,空間認知力の高い学習者ではなく,空間認知力の低い学習者に大きな効果があるはずだ。となります。


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この論文のレビューです
Mayer,R.E., Sims, V.K.(1994)
For Whom is a picture worth a thousand words?
Extensions of a dual-coding theory of multimedia learning.
Journal of Educational Psychology, 86, 389-401
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