5/04/2009

第4話 学習経験の役割

Role of Experience in Learning From Animations and Narrations

ひとつの学習者の特徴として,学習経験,つまり,これまでに今の学習内容に関連した内容の学習をしたことがあるかどうか,ということがあげられます。
そこで,私たちは,

 low-experience learners 学習経験度が低い学習者 とは,
特定分野の(学習対象の分野)知識の量が少ない学習者

 high-experience learners 学習経験度が高い学習者 とは,
特定分野の(学習対象の分野)知識の量が多い学習者

と定義します。

そのすでに持っている知識の量は,前述の「contiguity effect 近接効果」にどのような影響を与えるのでしょうか?

Dual-Coding Theoryからの考察により,
アニメーションとナレーションを同時に提示することは,meaningful learning(意味にある学習) (獲得した情報が,新しい状況下における問題解決のための知識に転換される学習)のために必要な3つの状態を可能にします。 
(visual representational connection 視覚情報の表象,

verbal representational connectin 言語情報の表象,
referential connection その2つの統合

 「表象とは,外から入ってきた情報の学習者自身が捕らえた像,イメージ」)

ということは,同時に提示することにより,
「学習経験度の高い生徒にも,低い生徒にも,高い問題解決のための転換が,推測される」

となります。

しかし,アニメーションとナレーションを同時にではなく,続けて提示したとすると,
2つの表象,視覚情報の表象と言語情報の表象は,同時にワーキングメモリー内にないので,その2つの統合が損なわれてしまうことになります。そうなると,

ここでの障害を切り抜ける方法を持たない,学習経験度の低い学習者は,
問題解決への転換が低くなると推測されます。

対照的に,学習経験度の高い学習者は,ナレーションが聞こえたとき,その言語情報から単独で自分自身の頭の中で視覚的イメージを作り出し,言語情報の表象とその視覚イメージを参照的に結びつけるというように,関連する知識を長期記憶から引き出すことができる可能性が高いので,
問題解決への転換における低下は見られないと推測できます。

以上の推測のように,Mayer と Gallini は1990年に,3つの研究から,言葉と視覚イメージを組み合わせは,学習経験度の高い学習者ではなく,学習経験度の低い学習者において,問題解決への転換を向上させるということに気づきました。

私たちは,この結果から,

「特定分野の知識は,言葉と視覚イメージを組み込んでいない教授を埋め合わせる」

と解釈します。

特に,言語情報と一緒に,有効な視覚イメージが提示されなかったとき,
学習経験度の高い学習者は,学習経験度の低い学習者に比べて,長期記憶からリソースモデルを引き出し,入ってきた言語情報の理解を補うためにそのリソースモデルを使うことができると考えます

したがって,今回の研究において,学習経験度の低い学習者のほうが,より言語情報と視覚イメージを取り込んだ教授により利益を得るので,学習経験度の低い学習者に焦点を当てることにします。

次は,空間認知能力の差異の影響です。おもしろいなぁと思いました。


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この論文のレビューです
Mayer,R.E., Sims, V.K.(1994)
For Whom is a picture worth a thousand words?
Extensions of a dual-coding theory of multimedia learning.
Journal of Educational Psychology, 86, 389-401
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