5/04/2009

Authority 出典,典拠,権威の信頼性

Peter Morville on the issue of
validity, trust and “authority”:
http://semanticstudios.com/publications/semantics/000057.php

2005年10月のAuthority についてのコラムです。

ブログやWikipedia,Folksonomists,その他いろいろなSocial softwareを使う人たちが多くなってきて,「言葉の誤用,乱用」がとても気になる,との指摘からコラムが始まっています。

(確かに,基本的に本のレビューではあるけど,専門家でもない私が,学習理論についてアップしている。理解が間違っていたり,和訳が専門家の中で一般に使われてないような言葉になっているかもしれない。ネットに載せる以上,気をつけてはいるけど,不安定さは残っている。。)

Authority つまり,出典,典拠,(権威)には,「正確性」「客観性」「通用する内容であること」が必要とされる。そして,私たちは,これらにしたがって,その資料が典拠として妥当かどうかを判断している。

その「典拠」が「Techonorati mod (modというのは,統制がとれない群集のこと)」によってめちゃくちゃになろうとしたとき,資料の典拠として,新しいものが,登場した。Wikipediaである。

Wikipediaは,不安定さをもっていて,論文などの参照資料には適してないけど,その認知的な出典としては十分に機能している。Wikipediaの設計,デザイン,管理性そして,そのブランドが,認知的出典もととしての存在をサポートしている。

素人がまちがって,事実ではないことをアップしたり,故意に嘘をアップされたりすることもあるかもしれないけど,その点を非難する前に,これまでの印刷された書籍等の典拠について考えてみる必要がある。現在,出典もととして使われている,辞典や雑誌,新聞などにおいても,正確性,客観性,通用性などを考えた場合,あてはまらない場合もあるのは,経験から分かるだろう。

Wikipediaは,専門家だけでなくいろいろな人が参加できる,まさに,ボトムアップ,協同カテゴライズの申し子とも言える。Wikipediaは,Folksonomyの性質を持ち,Findabilityのよさもあって,ブリタニカに勝利したとも言えるだろう。

ここで,Googleの話になるのだけど,ページランキングという意味で,GoogleがWikipediaなどのFolksonomy,つまり,フリーtaggingの王者とも言えるだろう。その革命は,Multi-Algorithmicにある。
1)Full Text :キーワードマッチング
2)Information Architecture: インターネットリンク構造の解析と手作業によるメタデーター
3)Free Tagging:サイト間のリンクの活用

有名ないたずらの,Googlebombs がある。
グーグルで miserable failure と入力すると,ホワイトハウスのブッシュのページが一番上にランクされてしまったという話である。時折,「authority of the masses 大衆の権威」が,定義を改めてしまうことがある。

詳しい話は,
グーグル「爆弾」 googlebombの解説はこのページで。
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/aun_seo.aspx?n=MMIT0j000005022007

最後に,意思決定の錯覚を2つ
1)Anchoring 何かを決めようとしたとき,最初に見つけた情報に影響を受けやすい
2)Confirmation 何かを探すとき,自分の考えをサポートしてくる情報を探す。したがって,対立する情報をさけてしまう。

そして,これらは,グーグルやその他の検索ツール,Wikipediaにも言えることである。
これらの検索結果で,何を学び,誰を信頼し,そして,どのように決定するか影響を受けているのである。

もちろん,私たちは,この,自分の資料を探し,自分のニュースを探すことを可能にした,これらのオープンメディアのパワーを認めなければならない。今日の,グーグルエコノミーにおいて,私たちは,私たち自身が「典拠,権威」になりつつある。

Google economy グーグルエコノミー,つまり,資料の価値は,(例えばWebページ,でもそれだけに関わらず,すべての資料において)他の資料からどれくらい参照されているか,リンクされているかで決定されるだろうというコンセプト。

(2005年の記事で,ちょっと古いけど,おもしろかった)



第7話 結論

Contiguity effect 近接効果は,空間認知力の高い学習者のほうに,高いという結論になります。
つまり,ワーキングメモリーが限られているので,空間認知力の低い学習者は,より多くを視覚イメージの表象を構築に充てなければならず,その後の,参照結合(2つの表象を統合すること)へ充てることができないからです。すなわち,空間認知力は,不足した情報を埋め合わせるために使われるというよりも,さらに学習を深めることに影響を与えるということになります。

まとめると,,,,

domain-specific knowledge つまり,学習内容に関連した知識は,足りない情報を埋め合わせる,良くない提示教材を補う働きをし, Spatial ability,空間認知力は,より学習を深める働きをするとなります。

この実験の結果は,実践の場面においては,学習者が言語情報の表象と視覚イメージの表象をつなげるチャンスを最大限にするような教材の価値を示しています。

そして,PaivioのDual-Coding Theoryを拡張した,私たちの提唱した Dual-Coding Theoryが,マルチメディア学習において,有効だということも示すことができました。

論文のタイトルにもある,
For Whom is a Picture Worth Thousand words? 誰にとって視覚イメージは1000の言葉に匹敵するのか? という,Larkin and Simon(1987)の問いに答え始めました。

研究からの答えは,関連した知識をもたない,高い空間認知力をもった学習者に,十分に考えられたマルチメディア教材(言語情報と視覚イメージを同時に提示した教材)は,もっとも大きな効果を与える


以上です。
(途中の細かい実験の方法や分析などは,スキップしました)

(((読み終わっての雑感)))

読みながら思ったことです。ちょっとくだらないかも。。

1)学習内容に関連した知識のある生徒は,授業の未熟さをカバーする
  学習者自身が,足りない情報を補おうとする機能をもっている。そのとき,長期記憶にある過去の学習を検索し,ワーキングメモリー内へ引っ張り出す,ということをする。長期記憶にあるものはなくなることはないというのが前提だから,パーフェクトな説明だけではなく,足りない説明を意図的に混ぜるのは有効ということ。。。かな。。評判のあまり良くない先生のクラスと,とても評判のいい先生のクラスの生徒のテスト結果に,それほど差がみられないことがある。。これは,(生徒同士で教えあってるってのもあるけど,)学習者には,足りない情報を補う機能が備わっているから!!だろうか。。とも考えてしまいました。

2)空間認知力が学習を促進する
  これは,,空間認知力は一般的に男性のほうが高いですよね。だから,とくにVisualization,
図やグラフの理解を必要とし,言語情報と視覚イメージを同時に提示することの多い授業,理科や数学では,男の子のほうが学習を深めているのでしょうか。。ということは,授業そのもののほかに,空間認知力を高めるトレーニングをすると,(授業内容とは別に。。)理解力が深まっていくのでしょうか???

3)マルチメディア教材は,学習を助ける。。から,そのデザインは重要だな。と思ったのですが,ということは,2)に関連して,やっぱり,空間認知力というのは,これまで以上に学習者にとって必要な時代になってくるのでしょうか。。。

などと思いながら,読んでいました。。


==========================================
この論文のレビューです
Mayer,R.E., Sims, V.K.(1994)
For Whom is a picture worth a thousand words?
Extensions of a dual-coding theory of multimedia learning.
Journal of Educational Psychology, 86, 389-401
==========================================

第6話 空間認知能力のもうひとつの仮説

前回の仮説は,空間認知力が,不足した情報を補うというものでした。
したがって,空間認知能力の高い学習者は,ワーキングメモリー内において,参照結合(言語情報の表象と,視覚イメージ情報の表象の統合)を行う際に不足した情報(視覚イメージ情報の表象)を補い構築できるので,近接効果は,空間認知力の低い学習者に対して大きな効果をもたらすはずである。となりました。

その仮説とは違う仮説として,空間認知力は,優れた教材提示の効果をさらによくする があります。 the ability-as-enhancer hypothesis です。

この場合,先ほどとは違う結論を得ることになります。

空間認知力が,効果を向上させるものとして,考えると,
言語情報と視覚イメージ情報が同時に提示されないとき,空間認知力が高い学習者も,低い学習者もいずれも参照結合を構築できないと結論付けられます。

しかしながら,同時に提示された場合,
効果を向上させるとする仮説により,空間認知力の低い学習者は,高い学習者よりも視覚イメージ情報の表象の構築において,より多くの「認知資源:外からの情報を受け取り,それが何であるかを判断したり解釈したりする過程において(認知)必要とするもの」を充てなければならない。したがって,空間認知力の低い学習者は,参照結合の構築にほとんど資源を充てることできない。となります。

空間認知力の低い学習者は,視覚イメージの表象を構築するときに,提示されたアニメーションなどを,何度も繰り返さなければならないでしょう。したがって,そのとき,認知資源を他のタスクに使うことができないわけです。

逆に,空間認知力の高い学習者は,多くの認知資源を参照結合に使うことができるので,最初の仮説の
空間認知力は,不足した情報を補うからの結論と違い,同時に提示された教材から,より多く効果を得ることができると考えられます。

もし,空間認知力が視覚イメージと言語を組み合わせた授業をさらに良くするとするならば,
空間認知力の低い学習者ではなく,空間認知力の高い学習者が,より大きな近接効果を得ると言えるでしょう。

この研究の目標を改めて言い直すと,
the ability-as-compensator と the ability-as-enhanser に関する,実証的なデータを提示することです。

これら2つの予測を,
言葉と視覚情報を組み込んだ提示,バラバラの提示,提示なし を比較することによって,2つの実験を行いました。対象となる学習者は,「学習経験の低い生徒で空間認知力の高い生徒」,「学習経験の低い生徒で空間認知力の低い生徒」です。

この実験は,
「近接効果は,空間認知力の高い学習者ではなく,空間認知力の低い学習者に大きな効果があるのかどうか」または「近接効果は,空間認知力の低い学習効果ではなく,空間認知力の高い学習者に効果があるのかどうか」に注目して行われました。


=====================================
この論文のレビューです
Mayer,R.E., Sims, V.K.(1994)
For Whom is a picture worth a thousand words?
Extensions of a dual-coding theory of multimedia learning.
Journal of Educational Psychology, 86, 389-401
=====================================

第5話 認知能力の役割

Role of Ability in Learning From Animations and Narrations

2つめの重要な学習者の特徴は,学習のときに使う認知的な能力です。
例えば,言葉と視覚イメージからの学習は,言語能力と空間認知能力に左右されます。したがって,私たちの研究は,空間認知を測るテストにおいて,高いスコアの学習者と低いスコアの学習者の学習結果を比較して進めます。

空間認知に関しては,さまざまな研究者によって,7つの方法で定義されています。
しかしながら,私たちは,空間認知能力の spetial visualization 空間的視覚化 に絞って考えたいと思います。

spatial visualization 空間的視覚化 とは,
頭の中で,2次元,または3次元で,物をまわしたり,折り曲げたりでき能力,
回したり,折り曲げたりした形態や形状の変化を想像する能力
のことです。

Sternbergは1990年に,空間的視覚化は,形を視覚化し,物の回転,そして,どのように,パズルのピースを合わせるかといった能力を含むとしています。

またh,Thurstoneは1941年に,空間的視覚化は7つの主要な認知能力のひとつだとしています。

さて,この空間認知力の程度が,contiguity effect 近接効果にどのように影響するのでしょうか。

今回の研究において,私たちは,意味のある学習(提示教材が新しい状況において,問題解決の場面で活用できるようになるための学習)に必要とされる,参照結合(視覚情報の表象と,言語情報の表象の統合)を構築する状況の下での,理解を模索します。

特に,私たちの目標は,「空間的な情報の処理スキルのマルチメディア学習における役割」
を特定することです。

私たちは,空間的認知力が学習に影響を与えるであろう2つの方法で,調べました。

まず一つ目は,以前の学習経験の推測のように,空間認知力も,学習を補うのではないかと考えました。
つまり,言語と視覚イメージを同時に提示しない場合,空間認知力の高い学習者は,ワーキングメモリー内の視覚イメージ情報の不足においても,イメージ情報を保持し,言語情報の表象と統合を構築できるのではと考えました。

ability-as-compensator hypothesis 不足を補う能力の仮説です。

したがって,この仮説に従えば,

「空間認知力の高い学習者は,言語と視覚イメージを同時に提示した場合も,続けて提示した場合も参照結合を構築できる。そして,空間認知力の低い学習者においては,言語と視覚イメージを同時に提示した場合にのみ,参照結合が構築される。」

(* 参照結合:言語情報の表象と視覚イメージ情報の表象の統合)

となります。

つまり,

もし,空間認知力が言語と視覚イメージの非同時提示による不足を補うとするならば,
近接効果 は,空間認知力の高い学習者ではなく,空間認知力の低い学習者に大きな効果があるはずだ。となります。


=======================================
この論文のレビューです
Mayer,R.E., Sims, V.K.(1994)
For Whom is a picture worth a thousand words?
Extensions of a dual-coding theory of multimedia learning.
Journal of Educational Psychology, 86, 389-401
========================================

第4話 学習経験の役割

Role of Experience in Learning From Animations and Narrations

ひとつの学習者の特徴として,学習経験,つまり,これまでに今の学習内容に関連した内容の学習をしたことがあるかどうか,ということがあげられます。
そこで,私たちは,

 low-experience learners 学習経験度が低い学習者 とは,
特定分野の(学習対象の分野)知識の量が少ない学習者

 high-experience learners 学習経験度が高い学習者 とは,
特定分野の(学習対象の分野)知識の量が多い学習者

と定義します。

そのすでに持っている知識の量は,前述の「contiguity effect 近接効果」にどのような影響を与えるのでしょうか?

Dual-Coding Theoryからの考察により,
アニメーションとナレーションを同時に提示することは,meaningful learning(意味にある学習) (獲得した情報が,新しい状況下における問題解決のための知識に転換される学習)のために必要な3つの状態を可能にします。 
(visual representational connection 視覚情報の表象,

verbal representational connectin 言語情報の表象,
referential connection その2つの統合

 「表象とは,外から入ってきた情報の学習者自身が捕らえた像,イメージ」)

ということは,同時に提示することにより,
「学習経験度の高い生徒にも,低い生徒にも,高い問題解決のための転換が,推測される」

となります。

しかし,アニメーションとナレーションを同時にではなく,続けて提示したとすると,
2つの表象,視覚情報の表象と言語情報の表象は,同時にワーキングメモリー内にないので,その2つの統合が損なわれてしまうことになります。そうなると,

ここでの障害を切り抜ける方法を持たない,学習経験度の低い学習者は,
問題解決への転換が低くなると推測されます。

対照的に,学習経験度の高い学習者は,ナレーションが聞こえたとき,その言語情報から単独で自分自身の頭の中で視覚的イメージを作り出し,言語情報の表象とその視覚イメージを参照的に結びつけるというように,関連する知識を長期記憶から引き出すことができる可能性が高いので,
問題解決への転換における低下は見られないと推測できます。

以上の推測のように,Mayer と Gallini は1990年に,3つの研究から,言葉と視覚イメージを組み合わせは,学習経験度の高い学習者ではなく,学習経験度の低い学習者において,問題解決への転換を向上させるということに気づきました。

私たちは,この結果から,

「特定分野の知識は,言葉と視覚イメージを組み込んでいない教授を埋め合わせる」

と解釈します。

特に,言語情報と一緒に,有効な視覚イメージが提示されなかったとき,
学習経験度の高い学習者は,学習経験度の低い学習者に比べて,長期記憶からリソースモデルを引き出し,入ってきた言語情報の理解を補うためにそのリソースモデルを使うことができると考えます

したがって,今回の研究において,学習経験度の低い学習者のほうが,より言語情報と視覚イメージを取り込んだ教授により利益を得るので,学習経験度の低い学習者に焦点を当てることにします。

次は,空間認知能力の差異の影響です。おもしろいなぁと思いました。


=======================================
この論文のレビューです
Mayer,R.E., Sims, V.K.(1994)
For Whom is a picture worth a thousand words?
Extensions of a dual-coding theory of multimedia learning.
Journal of Educational Psychology, 86, 389-401
======================================

第3話 近接効果 Contiguity Effect

Contiguity Effect 近接効果

前回の Dual-Coding Theory によると,
学習者は頭の中に,言語による説明によって,verbal representation 言語による表象を構築し,イメージによる説明によって, visual representation イメージによる表象を構築します。そして,これら2つの表象のreferential connecction 参照結合?を構築します。
つまり,このことより,学習者は,言語とイメージによる教材を同時に(近くに)提示されたときのほうが,バラバラに提示されるときよりも,より良く学習するという,予測をたてることができます。

バラバラに提示された場合,verbal representation 言語による表象とvisual representation イメージによる表象の2つは,作り出されますが,もうひとつの,のreferential connecction 参照結合?は,構築できないとなります。

したがって,Dual-Coding Theoryにしたがって考えると,2つをコーディネートした提示のほうが,コーディネイトされてない提示よりも,より良く,問題可決のための転換へと導くであろうと,予測できます。

この予測に合わせて論理を展開していくと,学習者の個人差,特に,「domain-specific knowledge 特定分野の知識」とspatial ability 空間認知力の役割を模索することによって,この研究を広げることは,有意義なことだと考える。

======================================
この論文のレビューです
Mayer,R.E., Sims, V.K.(1994)
For Whom is a picture worth a thousand words?
Extensions of a dual-coding theory of multimedia learning.
Journal of Educational Psychology, 86, 389
======================================

第2話  二重符号化理論

Dual-Coding Theory of Multimedia Learning

マルチメディア学習は,視覚的に提示されたアニメーションと言語的に提示されるナレーションといったような,二つ以上の様式において提示された情報をつかって,知識の構築が行われたとき起こります。
厳密にいうと,私たちの定義は,「multimedia」(授業者が2つ以上の提示メディアを使う)というよりも,むしろ「multimodal」(学習者が2つ以上の感覚様式を使う)といえるかもしれません。「視覚」と「言語」を使ってというのは,2つの違った感覚様式を意味し,「アニメーション」と「ナレーション」というのは,2つの違う提示媒体と言えるでしょう。

私たちの考える,Dual-Coding Theoryは,Paicio(提唱者)の理論をベースに変更をしたものです。学習しているときに,提示教材がどのようにワーキングメモリーないで統合されていくのかを説明する3つのプロセスを提案しています。

言語による説明を受け取ると,ワーキングメモリー内において,学習者は,頭の中に,受け取った対象であるシステムの像(表象)を構築します。視覚による説明を受け取ると,同様に,頭の中に像(表象)を構築します。外界から入ってきたものが頭の中に学習者のイメージとなるプロセスを,

verbal/visual represetational connection (verbal/visual encoding)

といいます。

そして,この頭の中に構築された2つの表象(頭の中に作られたイメージみたいなもの)が,統合されていきます。言葉による説明と,図やアニメーションによる説明が,同じものを説明していると認識する状態のことです。このことを, referential connection といいます。

この,Paivioの理論を拡張した,Dual-Coding Theoryは,特に,問題解決に関する予測を可能にしています。つまり,この3つのコネクション,visual representational connections, varbal representational connections, referential connectionsの形成を促すことが,問題解決のための情報の転換だと考えます。この3つのうち,どれかが欠けることは,すなわち,理解度が落ちることを意味するということです。


====================================
この論文のレビューです
Mayer,R.E., Sims, V.K.(1994)
For Whom is a picture worth a thousand words?
Extensions of a dual-coding theory of multimedia learning.
Journal of Educational Psychology, 86, 389-401
====================================

第1話 マルチメディア学習の二重符号化理論

今日から,新しい論文に移ってしまった。。。大目に見てください。

ということで,今回の論文は,

=========================================
Mayer,R.E., Sims, V.K.(1994)
For Whom is a picture worth a thousand words?
Extensions of a dual-coding theory of multimedia learning.
Journal of Educational Psychology, 86, 389-401
========================================

前回の本の著者の Mayer氏の論文です。

Dual-Code Theory ですが,日本語に訳すと,二重符号化理論となるけど,なんだか,余計イメージしにくくなるので,そのまま,Dual-Code Theory を使おうと思います。

それでは,始めます。

教育におけるテクノロジーの進歩にも関わらず,コンピュータベースの絵と言葉を使った教育をどのようにデザインしたらよいかに関する研究をベースとした理論が不足しているように思われる。
その教育におけるテクノロジーと理論のギャップを縮めるために,

「どの程度,個人差が,視覚と言語を使った教授による学習に影響を与えているか」

を調べました。特に,学習者の空間認知能力の学習における役割を特定することが目標です。

多くの研究による証拠が,テキストと絵を同時に提示することは,学習に影響を与えることを示しています。さらに,コンピュータベースにおいても,アニメーションは,視覚をベースとした情報を学習者に提示する強力なメディアであることも示されています。

それでは,Dual-Code Theoryについて述べた後,
1)contiguity effect :
  近接効果
2)the role of experience in the contiguity effect :
  近接効果における学習経験の役割
3)the role of ability in the contiguity effect :
  近接効果における「能力」の役割
4)the role of spatial ability in learning : 
  学習における空間認知能力の役割

の4つを考えていきます。 

5/01/2009

第8話 マルチメディア教材 デザインの原則

ここらか,Chapter2 Multimedia Instructional Messages です。
提示教材についてが述べられています。

Multimedhia Instructional Messages とは,
学習を促進させるための,言葉(音声によるものも含みます)と絵(動画も含みます)を使ったコミュニケ-ションと定義しています。

本では,文章と図で説明されているもの,コンピュータだったら,ナレーションやアニメーションをつかって説明しているもの,などです。

この定義は,次の3つのパートからなってます。

 message : 
  Multimedia Instructional Messages は,教師と学習者の両方によるコミュニケーション
  またはプレゼンテーションである,という考えを示します。

 instructional :
  Multimedia Instructional Messages の目的が,学習者自身の学習を進めることにある
  という考えを示しています。

 multimedia :
  Multimedia Instructional Messages が 言葉と絵 の両方を含むことを示しています。


ここでは,雷の学習の例によって,本をベースにしたマルチメディア教材と,コンピュータをベースにしたマルチメディア教材が,どのように構築され,学習結果を,「retention test 記憶テスト」と「trabsfer test 理解度テスト」によって,評価するかについて,述べられています。

雷の仕組みについての学習を例にあげながら,説明をします。
百科事典から,500単語程度の言葉により説明文を学習者に提示した場合,読んですぐあとの記憶テストおよび理解度テストの両方において,いい学習結果は得られませんでした。
そこで,生徒の理解度をあげるためには,別の方法が必要だということです。

ここでは,言葉による形態の限界が示されていて,視覚的な形態の提示に可能性があるということですね。それでは,言葉での説明と絵による説明をどのような組み合わせが,学習を広げるもっとも良い方法なのでしょうか

つまり,関連した内容の図と説明文が近くに提示されている,ということです。

この図は,Levin and Mayer の 一般的なデザインの原則「design principles」を適用しています。
デザインの原則とは,以下の7つです。

concentrated 集約させる
説明文もイラストも,重要点にしぼって,はっきりと示すこと

concise 簡潔に
余分な記述は最小限に,そして,余分な描写(例えば,必要以上の詳細な絵や,色)も最小限にすること。

correspondent 関連性
関連したイラストと説明文は,同じページの近くに配置

concrete 明確に 
説明文とイラストは見てすぐ分かるように提示すること

coherent 理路整然としている 
提示教材は,構造が分かりやすくなっていること。つまり,原因と結果のつながりが分かりやすく提示されていること

comprehensible 分かりやすく
学習者にとってなじみのある方法で提示すること。つまり,学習者のこれまでの経験と関連をつけやすい方法で提示すること。

codable
学習者が記憶にとどめやすくなるように,重要な用語や,イラストで示さされている重要な性質などを,頻繁に何度も使うようにする。

以上が,一般的なデザインの原則です。

(あらためて,整理されたものを読むと,分かってるつもりですが,頭の中に整理されていくものですねぇ。次に教材を作成するときには,この7つを思い出しながら,考えてみよう!!と思いました)

**********************************************
内容は,これから始まる春のセメスターで使う本の中のひとつの, Multimedia Learning の本を読んでの概要と感想を,読書記録?として書いています。著者は,Richard E.Mayerで,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です

2/23/2009

第7話 Active Learning とは

前回の,Meaningful Learning (必要な言葉などを覚え,自分のものとして理解し,そして新しい状況などにおいて,いろいろな解決方法へとつなげられるようになる学習のこと。)
を得るために必要なものについて考えを進めていくわけですが,ここで,Active Learningについて考えます。

著者の Mayer教授の定義として,

Active Learning とは,
学習の中で行う活動の結果,Meaningful Learningの学習結果を得るような学習活動のこと

としています。

それでは,その Activeな学習とは,学習者の「行動」がアクティブであるものを意味するのでしょうか?

例えば,学習者が,コンピュータのチュートリアル学習を使って学習しているとします。
ある学習者は,コンピュータからの質問に対して,キーボード入力によって回答し,コンピュータはその回答への正誤情報を提示しながら,学習を進めていました。
その行動は,一見アクティブな状況とも捕らえることができますが,その学習者の頭の中で,認知的にアクティブかどうかは別の問題です。

対照的に,ある学習者はコンピュータから提示される説明や,シミュレーションを見ながら,学習を進めているとしましょう。一見,情報を読んでいる(見ている)だけで,行動として,アクティブではない状況です。でも,その学習者は,提示されている情報から,頭の中で試行錯誤しつつ,原因と結果などを考えながら,提示情報から不足している部分は,すでに学習し持っている知識などを使いながら,学習を進めているとしましょう。これは,頭の中では活発に学習活動が行われている状況です。

つまり,アクティブな活動とは,学習中の学習者の「認知的な活動」を指しています。

meaningful learningな学習結果を得る方法は,体験的な学習だと考えることが多いでしょう。
インタラクティブ性の高いマルチメディアプログラムを考えるかもしれません。しかし,コンピュータゲームに見られるように,活発な認知的な学習を推し進めないことも多いのです。そして,ただの提示教材は,学習者は受身の学習をしていると考えることも多いでしょう。

ここでのポイントは,うまくデザインされたマルチメディアによる提示教材は,活発な認知的な学習を進めることができるということです。
つまり,meaningful learning は,いかに,認知的に活発な学習を作るか,ということです。

この本では,特にどのような提示教材が,認知的に活発な学習へ導くか,という点に注目していきます。



***********************
内容は,Multimedia Learning の本を読んでの概要と感想を,読書記録?として書いています。著者は,Richard E.Mayerで,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です

ポチッとお願いします
   ↓
にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へ

にほんブログ村 科学ブログ 脳科学へ
にほんブログ村

2/19/2009

第6話 3つの学習結果

マルチメディアを使った学習結果として,

 1 no learning
 2 rote learning
 3 meaningful learning

の3つの状態が考えられます。

その前に,主に考えられる,2つの学習目標

1 覚えること
2 理解すること

について,整理しておきましょう。

「覚えること」は,提示教材の再生と認識だから,「retantion test 記憶力テスト」で評価することができます。

  暗唱,正しい答えを選ぶマルチプル選択型の質問,True-False型質問 
  などが,Retention Test で,「学習の量を問うもの」となります。つまり,どれだけたくさん
  覚えたかということです。

「理解すること」は,頭の中に論理や説明などが理路整然と整理され,しっかりと自分のものになっている状態なので,(construct a coherent mental representation)提示された内容を,新しい状況の中で,使える能力に反映されることになります。したがって,「transfer test」によって,評価されます。

  エッセイテスト(問題に対する解決方法を問うたもの)などがあります。
  「学習の質を問うもの」となります。つまり,どのように学習したことを使えるか
  ということです。

もう,Mayer教授の方向が見えてきましたね。この本では,2の「理解すること」が目標となります。

学習結果の話にもどりましょう。

1の no learning は,つまり,retentionテストでも transferテストの両方で低い結果だったということです。質においても,量においても,学習がなされなかったということです。

2の rote learning (機械的な学習)は,暗記はできたけど,覚えたものが新しい状況に適応できる状態になってない,つまり,学習者自身のものになってない状態です。

3の meaningful learning (意味のある学習?)理想的な学習結果ですね。必要な言葉も覚え,その知識が理解となり,新しい状況において,クリエイティブな解決方法を考えることができた,という状態です。

この本での目標は,3の meaningful learning の学習結果を得るために,マルチメディアのデザインにおいて,必要な機能や特性を模索することです。
  
*************************
内容は,Multimedia Learning の本を読んでの概要と感想を,読書記録?として書いています。著者は,Richard E.Mayerで,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です

ポチッとお願いします
  ↓
にほんブログ村 科学ブログへ
にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へ
にほんブログ村

2/18/2009

第5話 マルチメディアラーニングの2つのメタファー

今回は,マルチメディアラーニングの2つのメタファー(Metaphor:分かりやすく表現すると,こんな感じのものかなぁとか, 考え方,とらえかた という意味)のお話です。

学習をデザインするデザイナーの学習のコンセプトによって,マルチメディアの使い方が変わってきます。そこで,2つの学習への考え方(メタファー)が提示されています。

1 Multimedia learning as information aquisition
  情報を獲得としての,マルチメディアを使った学習
  この場合,マルチメディアは,学習者へ,情報を運ぶシステムという解釈になります。

2 Multimedia learning as knowledge construction
  知識の構築としての,マルチメディアを使った学習
  この場合,マルチメディアは,認知的な理解の手助けをするものという解釈ができるでしょう。

それでは,1の as Infromation Aquisition から,具体的に見ていきましょう。

<<Multimedia Learning as Information Aquisition>>

情報獲得の考え方によると,学習は,「学習者の記憶に情報を加えること」が含まれます。この考え方は,次の4つの前提を伴います。

1 the nature of What is learned
  ここでの前提は,学習は,情報に基づくと言うこと。
  ここで言う,情報は,ある場所からある場所へと移動が可能なもの と考えます。
  つまり,コンピュータスクリーンから学習者の頭脳へ という感じです。

2 the nature of the Learner
  ここでの前提は,学習者の仕事とは何かということです。学習者のすることは,情報を受け取ること。したがって,学習者は外からの情報を受け取り,記憶するという,受身の状態ということになります。

3 the nature of the Teacher
  教師,(ここでは,学習デザイナーと考えてください。)の仕事の前提は,情報を提示すること。

4 the nature of the Goals of Multimedia Presentations
  最後に,マルチメディア教材の提示の目標の前提についてです。
  ここでは,できるだけ効率よく情報を運ぶということです。この考え方に従うと,ここでのメタファーは,「マルチメディアは効率よく学習者に情報を運ぶ乗り物」ということができます。

以上を踏まえると,情報獲得のメタファーは,「empty vessel view 空っぽの入れ物」と呼ばれることがあります。なぜなら,学習者の頭脳はまるで,空っぽの容器で,その空っぽの容器は,教師によって,情報を注ぎ込みいっぱいにする必要があるもの,と見ることができるからです。

(この考え方は,別の本でも触れられていました。その本は,ブラジルの教育学者による,「Banking Education」を書いたものです。痛烈に詰め込み教育について批判した内容でしたが,その中にも,「empty vessel」という言葉が出てきました。)

または,「transmission view」とも呼ばれています。なぜなら,学習者が情報を受け止めるために,教師が情報を伝達するからです。

さらに,「commodity view」とも呼ばれます。なぜなら,情報がまるで商品のように,ひとつの場所から別の場所へ移動が可能なものになっているからです。

もし,学習の目標が,ひとつひとつバラバラの情報を覚えるということならば,学習を上に書いたような意味での情報獲得の考え方で間違ってはないでしょう。しかし,学習の目標が,提示教材の理解を深めることであるなら,この学習獲得の考え方は不適切となります。

人が提示された教材を「理解」しようとするなら,人は気をつけて一つ一つの言葉をストックするテープレコーダーではなく,むしろ,提示された教材の意味に注目し,彼らがすでに持っている知識を踏まえ,その教材を解釈することにあるます。

<<Multimedia Learning as Knowledge Construction>>

対照的な考え方になります。この Multimedia Learning as Knowledge Construction の考え方に従うと,マルチメディア学習は,提示教材から自分自身の中で理にかなった考えを作ろうとする,
「sense-making activity  あ,そうかぁ,分かった そうなんだ! 活動」
の場と捕らえることができるでしょう。

「情報」と違って,「知識」というのは,学習者自身が構築していくものなので,情報のように,ある学習者の頭脳から別の学習者の頭脳へ運ぶことができません。

だから,2人の学習者は同じ提示教材から違う Outcome 学習結果を得ることもあるでしょう。

学習者の仕事は,提示教材を理解することなので,学習者は「active sense maker」であり,マルチメディア教材を理解し,整理し,理論的に自分のものとして組み込んでいくでしょう。

そうなると,教師の仕事は,その学習者の活動を支援することにあります。したがって,学習者が認知的な処理をサポートするのに必要なガイダンスを提示することとなります。
学習は,教師の学習が効果的により深くできるように支援を得ながら,学習者に「責任」があると言えます。

最後にマルチメディア教材の提示目標は,ただ単に情報を提示することだけでなく,提示された教材をどのように処理し理解するかのガイダンスの提供となります。

まとめると,Guiding Metaphor 学習を導くメタファーは,
「helpful communicator」となるでしょう。つまり,「マルチメディアは理解をを導くもの」「知識の構築を支援するもの」と捕らえることができます。

この本では,特に2番目の Multimedia Learning as Knowledge Construction の考え方を推し進め,
「学習は暗唱するものから,探して使うものへ変化している」というコンセプトを反映していきます。

次は,3つのマルチメディア学習から得られるもの Learning Outcome についてとなります。


***************************
内容は,Multimedia Learning の本を読んでの概要と感想を,読書記録?
として書いています。
著者は,Richard E.Mayerで,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です



ポチッとお願いします
  ↓
にほんブログ村 科学ブログ 脳科学へ

にほんブログ村 科学ブログへ
にほんブログ村

2/16/2009

第4話 学習者中心のアプローチ

前回の「失敗」の原因としてあげられた,Technology-Centeredアプローチへの著者の回答としてのアプローチです。
私は,このチャプターだけでは十分理解できてないので,これから後のチャプターで,理解が深まることを期待しながら,読んでいるところです。それでは,始めます。

Learner-Centeredアプローチ,学習者中心のアプローチは,まず最初に,人間の頭脳がどのような働くのか,「人間の学習を広げるためにどのようにマルチメディアが適応できるのか」との問いかけから始まります。人間の認知を助けるためにマルチメディアテクノロジーを使うことに焦点が当てられます。その研究は,人間の情報処理のシステムとデザインの特徴との関連性が関心事です。

ここで,Norman(1993)の主張をとりあげています。

「これまで,私たちがテクノロジーに奉仕してきた。でも,もう,機械中心の考え方ではなく,人間中心の考え方に変える必要があるんだ。テクノロジーが私たちに奉仕すべきなんだ」そして
「テクノロジーは私たちをもっとスマートにすることができるんだ。つまり,テクノロジーは私たちの認知の能力を広げることができるんだよ。」
Normanは,頭脳(mind)を助ける道具のことを,Cognitive Artifacts と読んでいます。
人間の思考や行動を促進させる目的で人間によって作り出されたものを,「artifact」と考える。
その中には,紙や鉛筆といった物理的なものと同様に,言語や算術のうようなメンタル的なものも含める。
そして,20世紀の最も重要な「Cognitive Artifact」は,コンピュータテクノロジーである。

Normanの学習者中心のデザインへのアプローチは,
「テクノロジーは,人間の能力を補足し,我々の苦手とする活動を助け,そして我々の本質的にあった活動を発展させる手助けをするべきである。」
Normanが作った”Things that make us smart”の中に,人間の認知をより促進するためのマルチメディアテクノロジーのデザインを見ることができます。

彼の(Norman)コンピュータテクノロジーのレビューの中に,Landauer(1995)が(多くの研究者も同様な主張をしていますよね)コンピュータおよび情報化革命は,かつての産業革命と同じくらい社会的に重要であると広く言われている。さらに,彼は,コンピュータテクノロジーの2つの段階について述べています。

 automation と augmentation

automationの段階とは,コンピュータをある仕事において,製造過程におけるロボットから,医療で使われるX線写真撮影やMRIなど,人間の代わりにに使っている段階です。

次の augmentation(増大,拡大,ふくらます) の段階は,
さまざまな認知的に複雑な人間のパフォーマンスをより大きくしていくために応用していく段階です。
コンピュータをアシスタントとして,そしてパワフルな道具としてデザインしています。

人間の meaningful human learning 意味のある学習を促進するための,マルチメディアの学習環境をデザインすることは,コンピュータを,augmentationの段階で使う,ひとつの例である。

次は,マルチメディアラーニングの2つのメタファー(Metaphor 分かりやすく表現すると,こんな感じのものかなぁ という意味)のお話です。

********************
内容は,Multimedia Learning の本を読んでの概要と感想を,読書記録?として書いています。著者は,Richard E.Mayerで,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です




ポチッとクリックもお願いします
   ↓
にほんブログ村 科学ブログ 脳科学へ
にほんブログ村

にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へ
にほんブログ村

第3話 マルチメディアをデザインの2つの視点 その1

マルチメディアで提示される教材は,とても強力な学習テクノロジーです。つまり,人間の学習を大きく広げるためのテクノロジーなのです。マルチメディアの研究の実践的なゴールはマルチメディアでの教材提示のデザインの原則を考案することにあり,そこで,マルチメディアを使った教材提示への2つのアプローチを区別して考えることは,この目標にとても有効であると考えています。

今回のテーマは,デザインへの2つのアプローチです。

アプローチとして,次の2つの視点でとらえられています。

1 Technology-Centered Approach
2 Learner-Centered Approach

それでは,1のTechnology-Centered Approachから,はじめます。このセクションでは,これまで,どうして,いまいちマルチメディアを使ったツールが教育の中で,有効に活用されてこなかったのかという著者の視点が述べられています。

Technology-Centered Approach は,まず,マルチメディアの機能的な性能から出発します。つまり,

「マルチメディアで提示する教材をデザインする際に,どのようにこれらの性能を利用することができるだろうか」

焦点が,最先端を行くマルチメディアテクノロジーにあてられた考え方なので,Technology-Centered のデザイナーは,おそらく,まさに大きくなっている無線でのアクセスやWWW,仮想空間での双方向のマルチメディア表現の構築などの「コミュニケーションテクノロジー」にマルチメディアを(絵と言葉を含めた提示される教材)統合させる方法に焦点をあてているでしょう。

著者は,このアプローチを「まちがった」アプローチだとしています。

その理由を,20世紀の教育工学を見ていくことで,説明をしています。
Technology-Centeredでのアプローチは,これまで,一般的に,教育の中での発展が続かなかったと。

例1)Motion Picture(動画)
20世紀はじめに発明され,その当時,このビジュアルテクノロジーは,教育を改善するだろうと大きな期待が寄せられました。

1922年 トーマスエジソンも,教育利用について次のように述べていました

「the Motion Pictureは,我々の教育システムを革命的に変えるものになるだろう。そして,それは,数年のうちに,全部とは言わないが,大部分で,教科書にとって代わるだろう」
「人類のすべての分野の知識(knowledge)を動画によって教えることが可能だ」と。

しかしながら,「ほとんどの教師は,教室でめったにフィルムを使うことはなかった」

例2)Radio
1932年 Benjamin Darrow オハイオ航空学校の創始者 が,ラジオについてこう述べています。
「ラジオは,世界を教室に運んでくれる。素晴らしい教師による授業,素晴らしい指導者の考えなどが,至る所で使えるんだ。」
1942年には,彼の同僚も同じように言っています。
「ラジオ受信機は,教室では,黒板と同じように,当たり前のものになるだろう。そして,ラジオを使った授業が,学校の中に入っていくに違いない」と。

私たちが,先を急いで,学校や家庭をインターネット上の教育コンテンツへ繋いでいきながら,ラジオに起こった同じような動きに何が起こったかの認識するのは,謙虚な考えではないかと考えています。

「ラジオは,教育現場のfull-fledged member(十分に一人前のメンバー)としては,受け入れられてはこなかった」

例3)テレビの教育利用
テレビは,動画と世界中をカバーするラジオが一緒になった,テクノロジー である。

1950年代までに,教育テレビは「Continental classroom(大陸教室?)」を作る方法として,褒めちぎられた。「すぐれた教育を低予算で」アクセスできるものとして。
しかしながら,論評は「教師は,テレビをめったに授業で使ってない」です。

最後の例です

例4)コンピュータ
コンピュータは,フィルム,ラジオ,テレビとは大きく違ってはいるけど,教育を改革するものという大きな期待を寄せられてきたという点で,同じです。

1960年代,チュータリングマシンは,教師の代わりになる と。

1970年代,莫大な投資にもかかわらず,Computer Assisted Instruction PLATOとTICCITの評価は,「これまでの教師主導の授業より良い学習を作り出すのに失敗した」となりました。

これらの4つの偉大な教育工学の歴史から,学べることとは何でしょうか?

まず,これら4つとも同じ道をたどってきているということです。
1 どのように教育を改革するのかという,大きな期待からはじまったこと
2 初期において,急いで最先端の技術を学校で使おうとした
3 20年30年のうちに,その期待は満たされてないことが明らかになった

視覚的な世界に広がる要素を持ったテクノロジーなのに,何が悪かったのでしょうか?

著者は,その理由を,Technology-Centered アプローチにあるとしています。

「人間の学習の必要性に合わせるためにテクノロジーを採用するかわりに,人間が最先端の技術に合わせさせられてきたからである。」
「推進の力が,人間の認知を促進させるというよりも,テクノロジーの力を使うことにあったからではないか?」
「テクノロジーの助けを借りて,人々の学習を助けるというよりも,人々に最新の技術へのアクセスすることに焦点が当てられてきたからだ。」

私たちは,同じような,「過大な期待」「大規模な実施」「失望」を繰り返そうとしてはいないだろうか?私たちのゴールが,テクノロジーへのアクセスと提供することにあるとしたら,私たちは,100年の失敗を伴ったTechnology-Centered アプローチをしようとしているのです。

次は,この失敗を繰り返さないためのアプローチとして,Learner-Centeredアプローチを著者が提案しています。


ポチッとお願いします
  ↓
にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へ
にほんブログ村

にほんブログ村 科学ブログ 脳科学へ
にほんブログ村

*************************

内容は,Multimedia Learning の本を読んでの概要と感想を,
読書記録?として書いています。
著者は,Richard E.Mayerで,
カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です

2/11/2009

第2話 マルチメディアメッセージの3つの視点

今回のテーマは 3つの視点です。マルチメディアメッセージ の視点として3つを考えることができます。
1.The Delivery Media View  
  内容を伝えるものとしての視点
2.The presentation Modes View  
  内容を表現する方法としての視点
3.The Sensory Modalities View  
  感覚としての視点です。

もう少し具体的に言うと,
1.の The Delivery Media View で,Multimediaを考えると,Multimedia は,2つまたはそれ以上の伝達手段を使って,題材を提示すること となります。

つまり,情報を伝達する物理的なシステムに焦点が当てられることになります。

2.の The presentation Modes View で Multimedia を考えると,Multimedia は,2つまたはそれ以上の提示モードを使って,題材を提示すること となります。

つまり,題材が提示される方法に焦点を当てた視点です。例えば,コンピュータを使ったMultimedia とは, 題材は,「言葉」 スクリーン上のテキストまたはナレーション,「絵」は スクリーン上のイラストや写真,そしてアニメーションとなります。

講義の場合のMultimediaは,題材は,「言葉」 講師の話す言葉として,「絵」  プロジェクターなどで提示された図表やビデオなどが考えられます。さらに,テキストブックのなかでのMultimedia とは,「言葉」 印字された文字「絵」  図表 などとなるでしょう。

3.の The Sensory Modalities View で 
Multimedia を考えると,Multimedia は, 2つまたはそれ以上の五感で 題材を受け取ること となります。

例えば,コンピュータを使った Multimedia とは, 題材は。。。アニメーションは,視覚で,ナレーションは,聴覚で受け取ることになります。講義では,講義者の声は,聴覚で,プロジェクトのスライドからの情報は 視覚で となりますね。

そして,テキストブックだと,言葉も絵も両方とも 視覚 から となるので,マルチメディアとはならないことになります。さて,以上の3つの視点ですが,2と3に関しては,学習者中心の視点となり,著者の考える中心となっていきます。

両方とも認知理論を基に論じることになるわけです。つまり,情報を得る方法および情報をキャッチする方法として,人間は2つの「channel」を持っているということです。

言葉から情報を得る場合と絵から得る場合 そして,視覚で受け取る場合と聴覚で受け取る場合ということです。次は,2つのマルチメディアのデザインの視点です。

これまで,メディアの教育利用がいまいち受け入れられてこなかった理由に触れられていました。

***********************
内容は,これから始まる春のセメスターで使う本の中のひとつの, Multimedia Learning の本を読んでの概要と感想を,読書記録?として書いています。著者は,Richard E.Mayerで,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です

2/09/2009

Quotation of the Day Mark Twain

Twenty years from now you will be more disappointed by the things that you didn't do than by the ones you did do. So throw off the bowlines. Sail away from the safe harbor. Catch the trade winds in your sails. Explore. Dream. Discover.

Mark Twain  英文ですが。。。

Quotation of the Day 
(右サイドにある,ブログツールで表示されているコーナー)
から,ときどき,紹介したいと思います。。。
いつもの,学習理論のお話ではないけど,番外編。。ということで,あちこちの気に入った英文サイトから,メモ代わりで,もし,よかったら,共有できたら,,ということで,やりたいと思ってます。。。

最初は,Mark Twain.

ニューヨークのブロードウェイのミュージカルで,
Is He Dead ? 
というタイトルの,コメディがありました。
友人と何気に見に行った作品でしたが,
2列目の,真ん中という,超度迫力の席で見ました。

この作品は,Mark Twain が作ったものですが,
フランスの画家のミレーのお話で,
当時は,あまりにもミレーをおもしろおかしく書いているものだから,
上映禁止になった作品です。









ということもあって,最初のQuotationが,Mark Twain であることは,
何かの縁かも!!! と思います。


ではでは,,,簡単に訳してみます。

Twenty years from now you will be more disappointed
by the things that you didn't do than
by the ones you did do.
So throw off the bowlines.
Sail away from the safe harbor.
Catch the trade winds in your sails.
Explore. Dream. Discover.

今から20年後,あなたは,あなたがやっちまった!!ことよりも,
やらないでいたことで,もっと落ち込むことでしょう。
だから,
もやい結びをはずそう!
平穏な港から,漕ぎ出してみようよ!!!
あなたの帆で,風を受け止めて。
探求しよう!!
夢を追いかけてみよう!!
そして,
新しい何かをみつけよう!!


............................
※ もやい結びとは:「結びの王様」といわれるほど簡単で代表的な輪結び。強固で安全、確実な結び方
.............................

40歳を過ぎて,これから10年を考えることが
ときどきあります。考えること,夢に描くこと。。。。
できない理由を考えるより,できることを少しだけやり始めることって,
大事だなって思うのです。

だから,今日のMark TwainのQuotationに,私も同感!!です。

・・・・・・・・・・・・・・

にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第1話 マルチメディアラーニングの定義

マルチメディア(Multimedia)っていう言葉はいろいろなところで耳にするし,誰でも普通に使っています。これから話を進める前に,一番根本になっている言葉,マルチメディア の定義についてが,今回のテーマです。

あ,もちろん,この本の中での定義がもっとも正しい!!というわけではありません。Mayer教授が定義し,これから最も多く出てくる言葉 マルチメディア という言葉は,こういった意味で使ってますよ!!ということです。でも,漠然としたものがクリアになってきました。

本題に入ります。

マルチメディア:言葉と絵の両方を使った教材を提示するもの としています。

もう少し具体的にしてみます。このMultimedia という言葉は,名詞または形容詞の両方で使うことがあります。

<名詞で使う場合>

テクノロジーそのものを指しています。この場合,Multimedia Technology ということになります。つまり,ビジュアルと言葉による教材を提示するのに使われるデバイスのこと となります。

<形容詞で使う場合>

次の3つの使われ方になります。

1.Multimedia Learning
  言葉と絵から学習すること

2.Multimedia message or multimedia presentation
  言葉と絵を含む提示のこと

3.Multimedia instrautional message or multimedia instructional presentaion
(or multimedia instruction)
  学習を促進させるための,言葉と絵を含んだ提示のこと

となります。そして,この本は主に1のMultimedia Learning を取り上げていくことになります。

最後に,「言葉」とは,話し言葉と書き言葉の両方のこと。「絵」とは,static graphic つまりイラストや写真それから,dynamic graphic つまりアニメーションやビデオを含んでいます。


*****************************

内容は,Multimedia Learning の本を読んでの概要と感想を,読書記録?として書いています。著者は,Richard E.Mayerで,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です



..........

マルチメディアラーニングを読む その1

この本は,初版が2001年で,2007年の9回目の改訂版です。
著者は,Richard E.Mayerで,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です。2000年に教育心理学の分野で,E.L.Thorndike Awardを受賞したそうです。




春のセメスターで使った,指定教科書の中の1冊で,200ページちょっとの本です。読んでみると他の指定教科書より読みやすくて,あまり辞書をひかなくても読み進めることができます。


何気なく使っていたマルチメディアという言葉や,マルチメディアラーニングという言葉の定義から始まりますが,前提がゆるゆるしている状態で,考えていたりしたんだなぁと思いました。まだ,読み始めたばかりですが,なるべく,自分の理解を深め,頭を整理するために,書いていこうかなと思います。。いつまで続くかわからないけど,とりあえず,スタートです。

2/08/2009

このブログは

去年の夏まで,ニューヨーク大学の教育部の大学院で,
Educational Communication and Technology
を勉強していました。
1年間の留学でしたが,2人の子ども(現在,中2と高3)と夫を
置いて,沖縄県の奨学金をもらって,勉強してきました。
現在は公立高校で数学の教師をしています。

高3の娘が,大学に合格したので,
英語での勉強を忘れにうちに,とても興味を感じた
学習理論,How people learn? についての論文や本を
読み始めようと思い,ブログを始めることに。

この1年は,少しずつ,このブログが軌道にのるように
頑張ってみようと思います。

よろしくお願いします。

ブログ村にも参加しました。
下の3つのカテゴリーです。
ポチッとクリックお願いします
   ↓
にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへにほんブログ村

にほんブログ村 科学ブログ 脳科学へにほんブログ村

にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へにほんブログ村