5/04/2009

第7話 結論

Contiguity effect 近接効果は,空間認知力の高い学習者のほうに,高いという結論になります。
つまり,ワーキングメモリーが限られているので,空間認知力の低い学習者は,より多くを視覚イメージの表象を構築に充てなければならず,その後の,参照結合(2つの表象を統合すること)へ充てることができないからです。すなわち,空間認知力は,不足した情報を埋め合わせるために使われるというよりも,さらに学習を深めることに影響を与えるということになります。

まとめると,,,,

domain-specific knowledge つまり,学習内容に関連した知識は,足りない情報を埋め合わせる,良くない提示教材を補う働きをし, Spatial ability,空間認知力は,より学習を深める働きをするとなります。

この実験の結果は,実践の場面においては,学習者が言語情報の表象と視覚イメージの表象をつなげるチャンスを最大限にするような教材の価値を示しています。

そして,PaivioのDual-Coding Theoryを拡張した,私たちの提唱した Dual-Coding Theoryが,マルチメディア学習において,有効だということも示すことができました。

論文のタイトルにもある,
For Whom is a Picture Worth Thousand words? 誰にとって視覚イメージは1000の言葉に匹敵するのか? という,Larkin and Simon(1987)の問いに答え始めました。

研究からの答えは,関連した知識をもたない,高い空間認知力をもった学習者に,十分に考えられたマルチメディア教材(言語情報と視覚イメージを同時に提示した教材)は,もっとも大きな効果を与える


以上です。
(途中の細かい実験の方法や分析などは,スキップしました)

(((読み終わっての雑感)))

読みながら思ったことです。ちょっとくだらないかも。。

1)学習内容に関連した知識のある生徒は,授業の未熟さをカバーする
  学習者自身が,足りない情報を補おうとする機能をもっている。そのとき,長期記憶にある過去の学習を検索し,ワーキングメモリー内へ引っ張り出す,ということをする。長期記憶にあるものはなくなることはないというのが前提だから,パーフェクトな説明だけではなく,足りない説明を意図的に混ぜるのは有効ということ。。。かな。。評判のあまり良くない先生のクラスと,とても評判のいい先生のクラスの生徒のテスト結果に,それほど差がみられないことがある。。これは,(生徒同士で教えあってるってのもあるけど,)学習者には,足りない情報を補う機能が備わっているから!!だろうか。。とも考えてしまいました。

2)空間認知力が学習を促進する
  これは,,空間認知力は一般的に男性のほうが高いですよね。だから,とくにVisualization,
図やグラフの理解を必要とし,言語情報と視覚イメージを同時に提示することの多い授業,理科や数学では,男の子のほうが学習を深めているのでしょうか。。ということは,授業そのもののほかに,空間認知力を高めるトレーニングをすると,(授業内容とは別に。。)理解力が深まっていくのでしょうか???

3)マルチメディア教材は,学習を助ける。。から,そのデザインは重要だな。と思ったのですが,ということは,2)に関連して,やっぱり,空間認知力というのは,これまで以上に学習者にとって必要な時代になってくるのでしょうか。。。

などと思いながら,読んでいました。。


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この論文のレビューです
Mayer,R.E., Sims, V.K.(1994)
For Whom is a picture worth a thousand words?
Extensions of a dual-coding theory of multimedia learning.
Journal of Educational Psychology, 86, 389-401
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