2/16/2009

第3話 マルチメディアをデザインの2つの視点 その1

マルチメディアで提示される教材は,とても強力な学習テクノロジーです。つまり,人間の学習を大きく広げるためのテクノロジーなのです。マルチメディアの研究の実践的なゴールはマルチメディアでの教材提示のデザインの原則を考案することにあり,そこで,マルチメディアを使った教材提示への2つのアプローチを区別して考えることは,この目標にとても有効であると考えています。

今回のテーマは,デザインへの2つのアプローチです。

アプローチとして,次の2つの視点でとらえられています。

1 Technology-Centered Approach
2 Learner-Centered Approach

それでは,1のTechnology-Centered Approachから,はじめます。このセクションでは,これまで,どうして,いまいちマルチメディアを使ったツールが教育の中で,有効に活用されてこなかったのかという著者の視点が述べられています。

Technology-Centered Approach は,まず,マルチメディアの機能的な性能から出発します。つまり,

「マルチメディアで提示する教材をデザインする際に,どのようにこれらの性能を利用することができるだろうか」

焦点が,最先端を行くマルチメディアテクノロジーにあてられた考え方なので,Technology-Centered のデザイナーは,おそらく,まさに大きくなっている無線でのアクセスやWWW,仮想空間での双方向のマルチメディア表現の構築などの「コミュニケーションテクノロジー」にマルチメディアを(絵と言葉を含めた提示される教材)統合させる方法に焦点をあてているでしょう。

著者は,このアプローチを「まちがった」アプローチだとしています。

その理由を,20世紀の教育工学を見ていくことで,説明をしています。
Technology-Centeredでのアプローチは,これまで,一般的に,教育の中での発展が続かなかったと。

例1)Motion Picture(動画)
20世紀はじめに発明され,その当時,このビジュアルテクノロジーは,教育を改善するだろうと大きな期待が寄せられました。

1922年 トーマスエジソンも,教育利用について次のように述べていました

「the Motion Pictureは,我々の教育システムを革命的に変えるものになるだろう。そして,それは,数年のうちに,全部とは言わないが,大部分で,教科書にとって代わるだろう」
「人類のすべての分野の知識(knowledge)を動画によって教えることが可能だ」と。

しかしながら,「ほとんどの教師は,教室でめったにフィルムを使うことはなかった」

例2)Radio
1932年 Benjamin Darrow オハイオ航空学校の創始者 が,ラジオについてこう述べています。
「ラジオは,世界を教室に運んでくれる。素晴らしい教師による授業,素晴らしい指導者の考えなどが,至る所で使えるんだ。」
1942年には,彼の同僚も同じように言っています。
「ラジオ受信機は,教室では,黒板と同じように,当たり前のものになるだろう。そして,ラジオを使った授業が,学校の中に入っていくに違いない」と。

私たちが,先を急いで,学校や家庭をインターネット上の教育コンテンツへ繋いでいきながら,ラジオに起こった同じような動きに何が起こったかの認識するのは,謙虚な考えではないかと考えています。

「ラジオは,教育現場のfull-fledged member(十分に一人前のメンバー)としては,受け入れられてはこなかった」

例3)テレビの教育利用
テレビは,動画と世界中をカバーするラジオが一緒になった,テクノロジー である。

1950年代までに,教育テレビは「Continental classroom(大陸教室?)」を作る方法として,褒めちぎられた。「すぐれた教育を低予算で」アクセスできるものとして。
しかしながら,論評は「教師は,テレビをめったに授業で使ってない」です。

最後の例です

例4)コンピュータ
コンピュータは,フィルム,ラジオ,テレビとは大きく違ってはいるけど,教育を改革するものという大きな期待を寄せられてきたという点で,同じです。

1960年代,チュータリングマシンは,教師の代わりになる と。

1970年代,莫大な投資にもかかわらず,Computer Assisted Instruction PLATOとTICCITの評価は,「これまでの教師主導の授業より良い学習を作り出すのに失敗した」となりました。

これらの4つの偉大な教育工学の歴史から,学べることとは何でしょうか?

まず,これら4つとも同じ道をたどってきているということです。
1 どのように教育を改革するのかという,大きな期待からはじまったこと
2 初期において,急いで最先端の技術を学校で使おうとした
3 20年30年のうちに,その期待は満たされてないことが明らかになった

視覚的な世界に広がる要素を持ったテクノロジーなのに,何が悪かったのでしょうか?

著者は,その理由を,Technology-Centered アプローチにあるとしています。

「人間の学習の必要性に合わせるためにテクノロジーを採用するかわりに,人間が最先端の技術に合わせさせられてきたからである。」
「推進の力が,人間の認知を促進させるというよりも,テクノロジーの力を使うことにあったからではないか?」
「テクノロジーの助けを借りて,人々の学習を助けるというよりも,人々に最新の技術へのアクセスすることに焦点が当てられてきたからだ。」

私たちは,同じような,「過大な期待」「大規模な実施」「失望」を繰り返そうとしてはいないだろうか?私たちのゴールが,テクノロジーへのアクセスと提供することにあるとしたら,私たちは,100年の失敗を伴ったTechnology-Centered アプローチをしようとしているのです。

次は,この失敗を繰り返さないためのアプローチとして,Learner-Centeredアプローチを著者が提案しています。


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内容は,Multimedia Learning の本を読んでの概要と感想を,
読書記録?として書いています。
著者は,Richard E.Mayerで,
カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です

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