2/18/2009

第5話 マルチメディアラーニングの2つのメタファー

今回は,マルチメディアラーニングの2つのメタファー(Metaphor:分かりやすく表現すると,こんな感じのものかなぁとか, 考え方,とらえかた という意味)のお話です。

学習をデザインするデザイナーの学習のコンセプトによって,マルチメディアの使い方が変わってきます。そこで,2つの学習への考え方(メタファー)が提示されています。

1 Multimedia learning as information aquisition
  情報を獲得としての,マルチメディアを使った学習
  この場合,マルチメディアは,学習者へ,情報を運ぶシステムという解釈になります。

2 Multimedia learning as knowledge construction
  知識の構築としての,マルチメディアを使った学習
  この場合,マルチメディアは,認知的な理解の手助けをするものという解釈ができるでしょう。

それでは,1の as Infromation Aquisition から,具体的に見ていきましょう。

<<Multimedia Learning as Information Aquisition>>

情報獲得の考え方によると,学習は,「学習者の記憶に情報を加えること」が含まれます。この考え方は,次の4つの前提を伴います。

1 the nature of What is learned
  ここでの前提は,学習は,情報に基づくと言うこと。
  ここで言う,情報は,ある場所からある場所へと移動が可能なもの と考えます。
  つまり,コンピュータスクリーンから学習者の頭脳へ という感じです。

2 the nature of the Learner
  ここでの前提は,学習者の仕事とは何かということです。学習者のすることは,情報を受け取ること。したがって,学習者は外からの情報を受け取り,記憶するという,受身の状態ということになります。

3 the nature of the Teacher
  教師,(ここでは,学習デザイナーと考えてください。)の仕事の前提は,情報を提示すること。

4 the nature of the Goals of Multimedia Presentations
  最後に,マルチメディア教材の提示の目標の前提についてです。
  ここでは,できるだけ効率よく情報を運ぶということです。この考え方に従うと,ここでのメタファーは,「マルチメディアは効率よく学習者に情報を運ぶ乗り物」ということができます。

以上を踏まえると,情報獲得のメタファーは,「empty vessel view 空っぽの入れ物」と呼ばれることがあります。なぜなら,学習者の頭脳はまるで,空っぽの容器で,その空っぽの容器は,教師によって,情報を注ぎ込みいっぱいにする必要があるもの,と見ることができるからです。

(この考え方は,別の本でも触れられていました。その本は,ブラジルの教育学者による,「Banking Education」を書いたものです。痛烈に詰め込み教育について批判した内容でしたが,その中にも,「empty vessel」という言葉が出てきました。)

または,「transmission view」とも呼ばれています。なぜなら,学習者が情報を受け止めるために,教師が情報を伝達するからです。

さらに,「commodity view」とも呼ばれます。なぜなら,情報がまるで商品のように,ひとつの場所から別の場所へ移動が可能なものになっているからです。

もし,学習の目標が,ひとつひとつバラバラの情報を覚えるということならば,学習を上に書いたような意味での情報獲得の考え方で間違ってはないでしょう。しかし,学習の目標が,提示教材の理解を深めることであるなら,この学習獲得の考え方は不適切となります。

人が提示された教材を「理解」しようとするなら,人は気をつけて一つ一つの言葉をストックするテープレコーダーではなく,むしろ,提示された教材の意味に注目し,彼らがすでに持っている知識を踏まえ,その教材を解釈することにあるます。

<<Multimedia Learning as Knowledge Construction>>

対照的な考え方になります。この Multimedia Learning as Knowledge Construction の考え方に従うと,マルチメディア学習は,提示教材から自分自身の中で理にかなった考えを作ろうとする,
「sense-making activity  あ,そうかぁ,分かった そうなんだ! 活動」
の場と捕らえることができるでしょう。

「情報」と違って,「知識」というのは,学習者自身が構築していくものなので,情報のように,ある学習者の頭脳から別の学習者の頭脳へ運ぶことができません。

だから,2人の学習者は同じ提示教材から違う Outcome 学習結果を得ることもあるでしょう。

学習者の仕事は,提示教材を理解することなので,学習者は「active sense maker」であり,マルチメディア教材を理解し,整理し,理論的に自分のものとして組み込んでいくでしょう。

そうなると,教師の仕事は,その学習者の活動を支援することにあります。したがって,学習者が認知的な処理をサポートするのに必要なガイダンスを提示することとなります。
学習は,教師の学習が効果的により深くできるように支援を得ながら,学習者に「責任」があると言えます。

最後にマルチメディア教材の提示目標は,ただ単に情報を提示することだけでなく,提示された教材をどのように処理し理解するかのガイダンスの提供となります。

まとめると,Guiding Metaphor 学習を導くメタファーは,
「helpful communicator」となるでしょう。つまり,「マルチメディアは理解をを導くもの」「知識の構築を支援するもの」と捕らえることができます。

この本では,特に2番目の Multimedia Learning as Knowledge Construction の考え方を推し進め,
「学習は暗唱するものから,探して使うものへ変化している」というコンセプトを反映していきます。

次は,3つのマルチメディア学習から得られるもの Learning Outcome についてとなります。


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内容は,Multimedia Learning の本を読んでの概要と感想を,読書記録?
として書いています。
著者は,Richard E.Mayerで,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の教授です



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